captain-asagaya’s blog

リアルヒーローの1年間の旅の記録

イングロリアス・バスターズ

歴史上のある分岐点が狂ったら...?


今作の舞台はWW2のドイツ軍の占領下にあるフランスだ。ブラピ率いるイングロリアス・バスターズは特殊部隊員で、ゲリラ活動をしている。メンバーの九人それぞれがナチスに強い敵意を持っていて、殺した敵の頭の皮をはぐのが習わしだ。そんな彼らにドイツ軍人たちは恐怖していた。物語はイングロリアス・バスターズとドイツの裏切者のスパイが接触するところから大きく動き出す。

 

今作の見どころはどこだろう。タランティーノお得意の復讐劇は相変わらず素晴らしく、スカッとする。シュールな笑いも盛り込まれていて面白い。だが、この映画の特筆すべき所は、史実を捻じ曲げている点である。ヒトラーが正史より早い段階で死に、ドイツもその時点で降伏するのだ。

歴史の”IF”を考えることは楽しい。あの時、あの人物がこんな行動をとれば今の世界は...という風に。だが、その妄想は全くもって無駄なことだ。タイムマシンでも作られない限り、今の世界や過去が変わることは絶対にないから。それでも”IF"を考えることにはロマンがある。私自身、世界史・日本史に限らず歴史の”IF"を考えたことは何度もある。もし織田信長が本能寺で死ななかったら・・・。もしルーク・スカイウォーカーがダークサイドに寝返っていたら・・・。日本は民主主義ではなくなっているのかもしれないし、ルークとダースベイダーが皇帝を倒し、全宇宙を支配しているのかもしれない。

タランティーノは人類の歴史上、最も世界に影響を与えた人物の一人であるアドルフ・ヒトラーに”IF"のターゲットを定めたのだ。実在の人物を歴史とは違った方法で自分好みに殺すのだから、一定数の視聴者から批判されるのは明らかである。それでも自分の考える”IF"という妄想を世界に発信したタランティーノはとても勇気があると思う。本人はそんなこと微塵も思ってなさそうだけど。


それにしても今作は本当に面白い。そもそも映画の常識をぶっ壊し続けているタランティーノなのだから、歴史をぶっ壊すことなど容易なことなのだろう。ヒトラーの死は本当に驚いたが、物語の軸が脱線することはなく、タランティーノ節で最後まで突っ走った。

 

もう一つ、今作の目玉といえる存在がクリストフ・ヴァルツ演じるランダ大佐だ。彼の存在感は主演のブラピを食っているほど。コイツはめちゃくちゃ悪い奴で、目ざとく頭が切れる上に氷のように冷徹な男だ。

「魅力的な悪人が登場しない映画はダメだ」的なことをヒッチコックは言っていたそうだが、なるほど納得できる。ランダ大佐がこの映画にどれだけのスリルを与えてくれたか。映画史に残るレベルの悪党ぶりだった。


常識を破壊しつくすタランティーノ。いい意味で、今作も普通の映画ではなかった。